大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和42年(ラ)108号 決定 1968年7月06日

抗告人 田中和子

相手方 沢清

主文

原決定を取り消す。

本件更正決定の申立を却下する。

右申立費用及び抗告費用は相手方の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨は主文同旨であり、抗告理由の要旨は別紙のとおりである。

先づ職権を以て原決定を検するに、この決定には受命裁判官として和解に関与した二人の裁判官の署名があるにすぎない。しかしながら和解が二人の受命裁判官によつて行なわれた場合にも、その和解調書の更正決定はこれらの裁判官の所属の合議部によつてなされることを必要とし、二人の裁判官によつて決定をすることは違法であるから、原決定はこの点において取消を免れない。

しかも民訴法一九四条、二〇三条により和解調書の更正決定をなすについては「違算書損其ノ他之ニ類スル明白ナル誤謬」のあることを必要とするのであるが、記録を精査するも、和解条項第二項中「昭和三四年」とあるのが「昭和三八年」の明白な誤謬であると認めるに足りない。尤も原審受命裁判官の内菊地博裁判官の昭和四二年五月一〇日付意見書には右の訂正につき控訴人及びその代理人日下基弁護士の承諾を得た旨の記載がある。しかし同弁護士は昭和四三年三月三日死亡した現在、この記載のみによつて、「昭和三四年」との記載が明白な誤謬であると見るには足りないし、また右承諾が更正決定に対する抗告権の放棄に該当すると解する余地があるとしても、原審裁判所に対するその旨の申述の書面が作成されていないので、民訴法三六四条三六五条四一四条に照すと、その効力がないと解すべきであつて、要するに右更正決定は許されないと解するほかはない。

よつて、原決定を取消し、更正決定の申立を却下すべきものとし、民訴法八九条を適用し、主文のとおり決定する。

(裁判官 沢井種雄 村瀬泰三 田坂友男)

(別紙)

抗告理由の要旨

一、本件は明白な誤謬に該当しない。

二、原決定は和解の内容的実質を変えるから、許すべきでない。

三、若し相手方の効果意思が和解に表われていないとすれば、錯誤の問題として和解そのものの無効を理由に本訴で争うべきである。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例